大型商談を成約に導く「SPIN」話法
- 2021.03.24
- Learning

小型商談の成功パターンは大型商談では致命傷になる。営業には、消費者相手に売る小売営業と企業相手に売る法人営業(Business to Business)の2つがある。私たちは普段B2B営業を見かけない。彼らの主戦場は企業オフィスなのだ。セールスマンの尻を叩き気合いと根性などの精神論で売上を上げさせようとする営業部はまだまだ存在している。
私自身はBtoB領域のセールスを新卒から13年実践してきた経験があり、営業はクリエイティブなものではなく科学であり再現性があるものだと声を大にして伝えたい。
B2B営業には小型商談と大型商談がある
両者の売り方は全く違う。小型商談で成功したスキルは大型商談では致命傷になる。「SPIN」話法は、行動心理学者のニールラッカム氏がハイウェスト社創業し、12年にわたり3万5000件の商談を調査研究し、独自のセールス法として開発したものだ。
1987年発刊された著書はB2B営業の常識となり「コンサルティング営業」を生み出すきっかけを作った。私は新卒で入った会社の新人研修にて「SPIN]話法を教わり、理論通りに実践して幾度と成績優秀者に名を連ねた経験がある。現在も事業を進める上でこの話法を大切にしている。何を隠そう、自社の社名はこの著書の一文を拝借したものだ。
「小型商談」
1回の商談で終わり買い手は1人で意思決定する。少額なので損しても許容範囲。セールスの商品知識がモノをいう。押しの一手は意外と効く。
「大型商談」
複数名が関わり商談が何ヶ月も続く。高額なので損すると顧客の責任問題。顧客の課題解決が必要。下手な押しの一手は「出禁」を招く。
では、大型商談を成功させるにはどうすれば良いのか?
顧客のニーズを見極める「質問」
考えるべきは顧客ニーズであり、それは2種類ある。
「潜在ニーズ」客が口にした問題
「顕在ニーズ」客が口にした欲求
潜在ニーズを把握することで小型商談の成約率は高まったが大型商談の成約率は高まらない。顕在ニーズを把握すれば、小型・大型商談ともに商談成約率が大きく高まった。実際にベテランのB2Bセールスマンに話を聞くと、彼らは客が口にした問題である潜在ニーズは信じておらず、客が口にした欲求である顕在ニーズを育てるために全力を尽くしていた。成功の鍵は、「潜在ニーズを、いかに顕在ニーズに育てるか」にある。
成功する商談は失敗する商談に比べ、質問が多く、買い手に多く話を促し顧客ニーズを明確にする。しかし、単に質問すれば良いわけではなく、退屈な質問攻めは極度に嫌がる。勝敗を分けるのは質問の内容である。顧客の時間は貴重であると認識し意味のある質問をすることだ。
そこで成功例に基づいて質問法をまとめたのが、「SPIN」話法である。この話法は以下4つの質問から構成されている。
「状況質問(situation)」
どんな〇〇ですか?というように事実や顧客の環境を収集する。この質問群を連発するとイライラするので、必要最小限にする。
「問題質問(problem)」
〇〇に満足していますか?というように現状の問題の潜在ニーズを語らせる。
「示唆質問(implication)」
(潜在ニーズの内容に沿って)その〇〇だと、直接・間接コストが高いのでは。関連する問題に発展するのでは。というように潜在ニーズが持つ問題の深刻さに焦点を当てて、顕在ニーズである顧客の欲求や理想の姿を浮かび上がらせる。
「解決質問(need-payoff)」
〇〇に変えるとどうなりますか?というように解決策の価値を、見込み客本人に語らせる。
ありがちな商談では、問題質問の直後に解決策の提示をしている。これでは相手は解決策への価値を感じず納得しない。この「SPIN]話法で重要なのが問題に焦点を当てた示唆質問である。潜在ニーズを膨らませ「〇〇が欲しい」という顕在ニーズ(欲求)を顧客の中に生み出し、解決に焦点を当てた解決質問によって問題の深刻さが解決コストを上回るようにするのだ。常に「提案で解決する価値の貴重さ」と「解決コストと問題の深刻さ」のバランスをイメージしながら話すことが大切である。
示唆質問は商談前の準備が重要であり次の3つを考える。
①見込み客の問題点を想定して書き出す
②関連した他の問題点がないか考える
③各問題でどんな質問が可能か考える
商談の成否は事前準備が8割だとよく耳にする。熟練のセールスはおそらくこれらは当たり前のことだと思っているはずだ。これらを身につけるには練習が必要である。友人か家族に対して新型iPhoneがなぜ欲しいの?と質問すれば良い練習になる。
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